日本自然保護大賞

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公益財団法人
日本自然保護協会 
日本自然保護大賞担当

〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F

受賞者

ご挨拶・総評

日本自然保護大賞2026
選考委員長

土屋 俊幸

公益財団法人
日本自然保護協会
理事長

3部門の大賞および選考委員特別賞、沼田眞賞の受賞おめでとうございます。そして、今回も、全国からたいへん多くの応募をいただきました。深く感謝いたします。いただいた応募申請書からは、それぞれの活動に関わるみなさまの熱意と自然に対する思い、また活動を取り巻く様々な困難を乗り越えて活動を続けて来られたご苦労がひしひしと伝わって来ました。審査の性格上、それらの中から、ごく少数を大賞候補としなければならず、今回も審査委員会は苦渋の選択を余儀なくされました。各審査委員の「四苦八苦」の総和として、今回お示しする審査結果があることをどうかご理解ください。なお、前回までの審査において「四苦八苦」仲間であった石井 実さん(大阪府立大学名誉教授、NACS-J理事)が昨年末に急逝されました。氏のご冥福を心からお祈りすると共に、今回の審査は委員1名欠員で実施されたことにご理解をお願いいたします。

本年の応募に見られる特徴としては、長い期間にわたって活動を積み重ねて来られた団体からの応募が多かったことがあげられます。本賞の審査のポイントは、地域性、継続性、先進性、協働性の4つです。活動を取り巻く世界の状況の変化が非常に激しく、継続することの困難性が格段に高まっている中で「継続性」の価値は非常に大きくなっているのですが、一方で、順応的な取組みを続ける中で、どのような先進性を獲得されたかも重要な選考のポイントでした。繰り返しになりますが、取り巻く環境の激変の中で、自然保護のあり方にも常に変化・成長が求められているからです。

受賞された方々と喜びを分かち合い、広く地域・全国の方々に活動の成果を知っていただくための授賞式は、今年もそれぞれの団体の活動地に伺って実施させていただくことにしています。これからも引き続き、ご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。

受賞者 活動紹介/講評

保護実践部門

藤前干潟の保全活動

特定非営利活動法人藤前干潟を守る会

愛知県

活動は、1984 年に名古屋市が廃棄物最終処分場の予定地として「名古屋港西一区」の埋立計画を発表したことに始まる。伊勢湾の奥に広がっていた広大な干潟は、江戸時代の新田開発と高度経済成長期の工業用地造成でほとんどが消滅。わずかに残る干潟に、渡り鳥の中継地としてシギ・チドリ類が集まっていた。それを知る地元のバードウォッチャーらが予定地を「藤前干潟」と名付けて1987 年から「藤前干潟を守る会」として保全活動を展開した。干潟の役割を伝える観察会、市が実施した環境アセスメントで市民調査データを元に評価見直しの折衝、廃棄物政策に対するごみ減量の提案など、鳥の生息地を守ることから始まった活動は社会のあり方を問う活動へと発展。市は1999年に埋立計画を中止するとともに廃棄物政策を見直し、市民の協力により大幅なごみ減量を実現した。保全後は「NPO法人藤前干潟を守る会」として現地での普及・啓発活動を中心に活動を継続し、市の環境行政充実に協力して2002年のラムサール条約登録、2010 年の生物多様性 COP10 誘致、2025 年のラムサール湿地都市認証などに結びつけた。

上左:干潟探検隊、上右:ビジターセンターでの校外学習対応、下左:湿地都市認証(ジンバブエにて)、下右:藤前干潟クリーン大作戦
講評

藤前干潟の保全運動は、地道な保全活動・普及活動と周到な政策提言の積み重ねで、名古屋市の廃棄物行政を転換させ、干潟を救っただけでなく、名古屋市が環境保全において先進的な都市へと成長するきっかけを作った(「なごやの環境の原点」)。さらには、大規模開発を懸念して立ち上がった全国各地の自然保護運動に与えた影響も大きい。各地の運動に勇気と大きな可能性を与えたと言える。埋立ての回避後も、ラムサール登録、COP10誘致やラムサール湿地都市認証など、長年の活動の中で歩みを続けていることは賞賛に値する。

土屋 俊幸東京農工大学 名誉教授/一般財団法人林業経済研究所 所長/公益財団法人日本自然保護協会 理事長

教育普及部門

汚れた「水の都・三島」の自然環境を
地域協働で再生・保護
―「水と緑の自然保護ネットワーク」を
創造―

特定非営利活動法人グラウンドワーク三島

静岡県

1960年代の産業活動の活発化による地下水の汲み上げにより「水の都・三島」の水辺自然環境は悪化。市内最大の湧水河川である源兵衛川にはゴミが捨てられ、汚れた川になってしまった。そんな故郷の原自然・原風景を取り戻そうと三島市民・団体が結集し、英国で始まったグラウンドワークを日本で最初に三島に導入、1992年に「グラウンドワーク三島」が設立された。以来34年間にわたり、市民・NPO・企業・行政との地域協働によって75箇所の環境保全が続けられてきた。市街地を流れる源兵衛川や狩野川の旧河川敷の松毛川、富士山水系の湧水池が点在する境川の3つの河川を中心に、希少種の生息環境の復元や潜在自然植生の樹木を植林。流域固有の環境特性を強化し、相互の生態系の循環・回廊性を拡大する「水と緑の自然保護ネットワーク」を創造した。それにより、絶滅危惧種のミシマバイカモやホトケドジョウが復活、子どもが川遊びに興じ、ホタルが乱舞する親水性の高い水辺環境がよみがえった。結果、「環境の防人」の人材育成とともに、観光交流客数の増加にもつながり、自然保護が起爆剤・牽引力になった賑わいのまちづくりが進んでいる。

上左:清流がよみがえった源兵衛川 上右:ミシマバイカモの群生地 下左:大学生による草刈り作業 下右:環境出前講座
講評

「水の都・三島」の復活を合い言葉に、市民・NPO・企業・行政が協働し、地域外も含めた専門家が協力する体制づくり・仕組みづくりを踏まえて、水辺を中心とした原自然・原風景の再生・保護を目指す活動が始まってから34年が経った。今でこそ、中間支援組織が主導し、企業をパートナーとする地域活動は、ネイチャーポジティブの掛け声のもと一般的になりつつあるが、グラウンドワーク運動が初めて日本で導入された三島での実践は、多くの困難を乗り越えなければならなかった。協働の重要性を、楽しさと共に伝えてきた教育普及の実績を高く評価する。

土屋 俊幸東京農工大学 名誉教授/一般財団法人林業経済研究所 所長/公益財団法人日本自然保護協会 理事長

子ども・学生部門

モリアオガエルが教えてくれた、
ため池がつなぐ命と地域の未来
― 生徒が動かした、ため池再生と地域連携の実践 ―

西宮市立山口中学校 モリアオガエル保存会

兵庫県

西宮市立山口中学校モリアオガエル保存会のルーツは、1968年の理科部員によるモリアオガエルの死骸発見から。卵塊採取と飼育観察などの活動が続けられてきたが2017年に理科部廃止に伴い活動終了という危機に直面。2018年に生徒と教職員による「保存会」が発足した。

活動は続く一方で、産卵数は減少。原因は水辺環境の悪化や外来種増加にあった。「卵を守るだけでは未来は守れない」。その危機認識が池全体を守る挑戦の出発点となり、モリアオガエルを起点にしたため池の総合的再生の取り組みとなった。生徒主体で、長期モニタリング、水質改善、外来種対策、産卵環境の創出を体系化し、成果をデータと発信で可視化してきた。モリアオガエルにとどまらず “ため池という地域インフラ”の再評価へ発展した学校発の取り組みは、地域へ波及する持続可能な保全モデルとなった。

上左:モリアオガエル保存会の皆さん、上右:発信器をつけたオス。行動範囲を調べたところ最大656mの移動を確認、下左:繁殖池掘り、下右:モリアオガエルの卵塊採集
講評

始まりは1968年。理科部員によるモリアオガエルの死骸発見から保護活動が始まった。生徒主体の保護活動は調査・分析・提言・発信と多岐に渡る。外来種の増加や水辺環境の悪化の影響を受けたがそこからはかえって危機認識が芽生え、「卵を守るだけでは未来は守れない」と池全体を守る出発点となったというのだから素晴らしい底力だ! 現在では全校生徒の5分の1が参加し地域とも連携をするボランテイア組織になっている。未来を担うユースとして幼稚園での環境学習やテーマソング「カエル場所」も有り!是非聴いてみたいものだ!

イルカIUCN親善大使/シンガーソングライター/絵本作家/公益財団法人日本自然保護協会 参与

沼田眞賞

自然豊かな川をみんなの手で
―科学・学び・共創で育む生物多様性

九州大学 流域システム工学研究室

福岡県

治水を最優先した従来の河川改修は、人々の暮らしを守る一方、生態系や景観、川に根ざした文化、住民の川への愛着を損なうこともあった。水害の激甚化と生物多様性損失が進むなか、九州大学流域システム工学研究室は、減災と自然環境の保全を両立し、「いい川・いい流域・いい社会」を実現するため、2003年の設立以来、住民、行政、学校、NPOなどと共創してきた。科学的知見に基づく環境・防災一体の川づくり、災害復旧、合意形成、環境教育を包括的に実践している。

福岡県福津市を流れる上西郷川では、地域住民や河川管理者等多様な主体との共創によりコンクリート二面張りの川を自然の営みを生かした川へ再生。調査で確認される魚種数は約3倍、個体数は11倍に増加した。現在は、川遊びや小学校の授業の場となり、年間のべ1万人を超える子どもたちに利用されている。改修計画から始まり維持管理やイベント企画など川づくりの話し合いは150回を超えて現在も続く。上西郷川をはじめ、国内30以上の河川・地域で自然環境の保全・再生、川を軸とした地域づくりを実現。16年以上にわたる環境教育の受益者は延べ1万5千人を超える。地域住民とDIYで造る“小さな自然再生”や“雨庭づくり”、“耕作放棄地における湿地再生”を各地で主導。学術研究・教育・社会実装を連動した成果は、教科書・行政資料にも掲載され、様々な地域にも広がっている。

上左:多主体共創により再生された上西郷川 上右:川づくりの話し合い 下左:地域の子供たちとDIYで生物の生息環境をつくる 下右:再生された川での環境学習の様子
講評

研究室設立以来 20 年以上にわたって、科学的知見に基づき、多様な主体との共創により、自然環境の保全と防災・減災を両立させた河川・地域づくりを全国ヵ所 30 以上の地域で実践し、グリーンインフラの重要性を定着させた。学術的研究成果をもとに技術的提案や設計を提案するとともに、住民参加のワークショップ運営や地域での教育活動を通じて合意形成を行って社会実装に結びつけると同時に、持続的な維持管理体制の構築や地域活性化に貢献している点も高く評価され、沼田賞にふさわしいと判断された。

中静 透東北大学名誉教授/公益財団法人日本自然保護協会 理事

選考委員特別賞

鉢伏山 Nature Positive Project

株式会社Iーne、岩阪自治会、鉢伏山森づくりの会、大阪府森林組合

大阪府

かつては生活に不可欠な共有林が、放置による環境の悪化や2018年の大型台風による被害に直面し地域での自力再生が限界に。地域固有の入会地の再生に向けて、2023年に株式会社I-ne/森林組合が参画し、これまでの地域活動と企業の資本、林業の専門組織の技術を結びつける体制が始まった。都市近郊でありながら、希少種を含め300種以上の生命が息づく自然共生サイトである鉢伏山での地域社会・森林組合・企業の協働による里山保全活動を展開している。台風被害エリアへの地域性桜苗等の植樹、サイト内の希少種保護に加え、ヒノキ人工林にギャップを形成し埋土・散布種子から天然林への林種転換試験プロジェクトを実践。企業の参画と自然共生サイト認定を契機に地域活動団体の自律的な活動が活性化し、年間の延べ活動人数が増加。株式会社Iーneは3年間で180人を超える社員がボランティア参加。保全活動に加えて独自に「参加社員のインパクト評価」を開始し、ビジネスからネイチャーポジティブを牽引する人材の成長支援に着手している。

上左:プロジェクトに取り組む皆さん 上右:大型台風による被害を受け、地域性桜苗の植樹を実施 下左:ササユリ 下右:企業社員ボランティアの活動風景
講評

大阪府内の里山で、台風被害によって被害を受けた人工林の広葉樹林転換による再生を中心に、地元住民・団体、森林組合、企業らの有機的な協同によって活動を推進してきた。本プロジェクトは自治体が作った制度を利用したものだが、特に企業の参画が「社員が活動に参加する」ことにとどまらず、企業の強みを活かしたプロジェクト推進、社員の評価システムを含め、ネイチャーポジティブに貢献できる人材開発まで踏み込んでいる点を評価した。

神谷 有ニ株式会社山と溪谷社 第2出版統括部統括部長/公益財団法人日本自然保護協会 理事

選考委員特別賞

生きものあふれる
「いのちの棚田」を未来へ
―20年の棚田再生―

特定非営利活動法人棚田LOVERS

兵庫県

過疎・高齢化や後継者不足で耕作放棄が進み、地域から「あと5年で棚田がなくなる」との声があがった。兵庫県市川町の棚田とそこに息づく命を未来の子どもたちへつなぎたいと、2007年から地域住民とともに再生・保全活動を開始。

草に覆われていた耕作放棄棚田23枚を再生し、農薬・化学肥料を使わず米育てを継続。棚田や水路・里山が連なるフィールドでは、希少種を含む180種以上の生きものが確認されている。2025年の比較調査では、長期放置した休耕田では25種に対し、再生・整備した棚田では73種と約3倍の植物を確認。2026年に自然共生サイトに認定された継続的に保全・管理を行ってきた棚田ではさらに多い82種の植物種を確認している。人が関わり続けること、継続することの価値や意義を意識し、棚田での原体験、自然との出会いを通じ、いのちの棚田を未来の子どもたちへつなぐため、調査・保全・環境教育・担い手育成が循環する仕組みを目指し、地域での実践を全国に共有するオンライン企画には80名を迎えて取り組んでいる。

上左:活動に参加されたご家族の棚田でのひとこま 上右:400年前から先祖代々引き継がれている市川町秋の棚田 下左:町長・教育長・環境省・地域・都市の皆さん 下右:都市や地域の皆さんとの田植え体験
講評

20年以上にわたって棚田の再生に取り組み、23枚もの耕作放棄地を再生して農薬や化学肥料を使わない米作りを実施するなど、棚田再生活動の継続年数や広さに情熱と地道な努力が感じられ、高く評価されました。専門家と生物調査を実施して180種以上の生き物を確認し、再生した棚田とそうでない田んぼの生き物を比較する「見える化」をしている点も先進的です。棚田ノートで自分事化する活動も有効です。国の自然共生サイトにも認定されました。科学、数字、認定などの見える形で成果を出していくことが地域で保全する原動力にもなる優れた事例です。

藤田 香東北大学 グリーン未来創造機構教授/大学院生命科学研究科教授/公益財団法人日本自然保護協会 理事

入選者一覧(6件/都道府県順)

  • 受賞者

    特定非営利活動法人ベルデ

  • 地域

    東京都

  • 活動テーマ

    青梅の杜から里山理念を実践・発信

  • 講評

    里山保全活動を地域のランドスケープデザインの元に位置づけ、広い活動エリアで多面的な活動を行いながら、FSC森林認証や環境省モニタリングサイト1000など、地域の枠にとらわれない連動を展開していることを評価した。(神谷有二)

  • 受賞者

    三重県いなべ市教育委員会(自然学習室 藤原岳自然科学館)

  • 地域

    三重県

  • 活動テーマ

    「自然教室の50年」と「自然学習園ふるさとの森」の維持・活用

  • 講評

    1975年に開始した自然教室を少数のスタッフと地域の小・中・高校教員が協力して、50年以上にわたり自然保護の基礎となる地道な地域活動を継続した。また、市町村合併などによる運営体制の変化や、全国的に博物館などの活動が厳しくなる状況の中で、科学研究発表会や自然科学作品展の開催を通じて、人材育成を継続した点も評価できる。(中静 透)

  • 受賞者

    一般社団法人 E.Cオーシャンズ

  • 地域

    愛媛県

  • 活動テーマ

    船でしか行けない浜辺の漂着ゴミを調べて伝えて拾う活動

  • 講評

    世界的にマイクロプラスチックの悪影響が問題になっているが、海の中の事なのでその具体的な実態を把握するのは難しい事となっている!「船でしか行けない浜辺の漂着ゴミを調べ伝え拾う活動」と言う事で海に精通したプロ達が衛星画像を使うなど可視化し日本の海から発信している。(イルカ)

  • 受賞者

    湯梨浜学園中学校高等学校

  • 地域

    鳥取県

  • 活動テーマ

    ICT機器を使った鹿忌避効果で里山を守る

  • 講評

    シカによる獣害という地域の課題を学校全体で取り組み、さまざまICT技術を使って調査から対策を実施し、実行力のある活動となっていることを評価した。そのうえで、今後の継続と展開を期待して入賞とした。(神谷有二)

  • 受賞者

    次世代のためにがんばろ会

  • 地域

    熊本県

  • 活動テーマ

    生きもの潟りから未来へ ― 地域と次世代を育てる25年

  • 講評

    自然保護活動を継承する高校生組織の発足や九州高校生SDGsサミットの開催など、九州全域に次世代が活躍する仕組みを広げている点が、優れた環境人材育成活動だと評価されました。干潟の保全活動を25年間継続し、参加者の輪を広げていることも素晴らしいです。(藤田 香)

  • 受賞者

    山川海のゆりかごを守る会

  • 地域

    鹿児島県

  • 活動テーマ

    海のゆりかごを守り、育て、つなぐ 〜指宿・⼭川発 アマモ場再⽣の地域協働プロジェクト〜

  • 講評

    漁業協同組合という生産者が中心となってアマモ場を再生し、J-ブルークレジット認証取得まで結び付けた成果は素晴らしい。漁協初の自然共生サイトに認定され、藻場再生をツーリズムや弁当にもつなげて地域資源として活用しています。全国の漁業者の模範例となる取り組みです。(藤田 香)

※講評者の所属等は、受賞当時のものです。