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Report活動報告

2026.3.6

2025年授賞式

【日本自然保護大賞 2025】
特別賞/沼田眞賞 矢野亮氏への授賞セレモニーを開催しました。

散策路で説明する矢野氏の写真

自然保護と生物多様性保全に日本で最も貢献した取り組みを表彰する「日本自然保護大賞2025」は、今回で11回目。前身の沼田眞賞から数えると24回目の開催となりました。全国から72件の応募をいただき、3つの部門の大賞と、特別賞として沼田眞賞、選考委員特別賞の授賞者が決まりました。受賞者への授賞セレモニーは、受賞団体の地域を訪問して開催しています。

賞状の写真

2025年12月4日(木)、国立科学博物館附属自然教育園(東京都目黒区)にて、「日本自然保護大賞2025」特別賞の沼田眞賞を受賞した矢野亮氏の授賞セレモニーを開催しました。

矢野亮氏は、「自然教育の神髄を探る」というテーマで特別賞の沼田眞賞を受賞。東京都立高尾自然科学博物館、国立科学博物館附属自然教育園などをフィールドに、一貫して「自分で調べて、自然観察」することを長年にわたり行ってこられました。定説に対しても、仮説を立て、記録を取り、フィールドにて検証をし、都市のカラスの生態、カワセミの繁殖生態、アズマヒキガエルの生活、キアシドクガの異常発生とミズキの大量枯死など長期にわたる調査も多く、多くの知見を見出されました。

また、フィールドでの豊富な調査研究の成果をもとに、自然保護や自然教育の普及にも積極的に取り組まれました。現在では一般に普及している「飛ぶたねのふしぎ」プログラムは、矢野氏が「根をはり動かない植物が、分布を広げるために様々な工夫をしてたねを散布していることの面白さ」を早い時期に取り上げ、工作のノウハウと展開をプログラム化し、材料の供給体制も作ることで、一般化に大きく貢献されました。

自然教育園は、生態学者らによって決定された管理の基本方針にそって1972年から長期間にわたり植生遷移を維持し、変化や動植物の消長が記録されている世界的にも稀有な都市林です。矢野氏はその大半の期間の運営に携わり、こうした長年の活動により、自然保護、自然教育の発展のための礎を築きました。

授賞セレモニーでは、選考委員の中静透氏(国立研究開発法人森林研究・整備機構理事長、森林総合研究所所長)より、講評と賞状・盾が授与されました。

中静選考委員と矢野氏の写真
写真左から、中静透選考委員、矢野亮氏

矢野氏からは、自然教育園での55年間の活動の中で最も力を注いできたのは、園内で繁殖するカワセミの調査であったこと。教育活動では、学校や同園の一般来場者を対象とするだけでなく、環境教育を広げていくためには指導者を育てることが重要だと考え、自然観察指導員講習会の講師も務めてきたことをご紹介いただきました。

他にも、自然教育園にはゲンジボタルが生息しているのですが、ここは江戸時代には高松藩主の下屋敷があった場所のため四国のゲンジボタルが持ち込まれたのではないかという説があったことから遺伝子解析を行った結果、同園のゲンジボタルは東日本系統であり、室町時代から生き続けてきた可能性があることが分かったのだそうです。

矢野氏の講演の様子
遺伝子解析結果のスライド

自然教育園元職員で矢野氏の先輩にあたる品田穣氏の祝辞では、「それまでの環境教育は知識を深めることが中心だったものの、矢野氏は「知識だけでなく、実際に体感することが大切だ」と考え、体感学習の先駆けとなる取り組みを進めてきた」との紹介もありました。「飛ぶたねのふしぎ」をはじめ、自然のしくみを体験を通して知るプログラムを生み出すなど、「矢野氏は体感学習のパイオニア」との紹介も印象的でした。

また、定説があってもそれを鵜呑みにせず、自分の目で確かめる姿勢を貫いた研究者だったことにも触れられました。その例として、ヒキガエルの研究では、園内で約3,500匹もの個体を識別し、地道なフィールド観察と検証を重ねながら行動を明らかにしていったエピソードが紹介され「矢野氏は破格のナチュラリスト」と称えていらっしゃいました。

最後に、国立科学博物館長で自然教育園園長でもある篠田謙一氏からもご挨拶いただき授賞セレモニーは閉会となりました。

集合写真
授賞セレモニーには、自然教育園で矢野氏と一緒に活動をしてこられた職員の皆様やボランティアの皆様などたくさんの方がお祝いに駆け付けてくださいました

授賞式当日、授賞セレモニーの前に、自然教育園内での研究施設などを矢野氏にご案内いただきました。

巣箱の説明をする矢野氏
参加者に説明をする矢野氏
水が抜かれた池の写真
教育園内の池(当日は水が抜かれていた状態)。写真奥の堀の壁にカワセミ
穴の写真
カワセミの巣の横に穴を掘ってカメラを設置し記録していた
「カワセミ迎賓館」と名付けられた、カワセミ専用の観察小屋
品田氏、矢野氏、中静委員の写真
写真左から、品田穣氏、矢野亮氏、中静透選考委員

矢野氏が考案し、全国に広まった体験学習プログラム「飛ぶタネのふしぎ」も、実際に体験させていただきました。まずは室内で、飛ぶタネの模型づくりからスタート。

タネの模型と書籍の写真
タネの模型を持って説明する矢野氏の写真
模型作りを指導する矢野氏の写真
タネの模型を持つ女性の写真

タネが空を舞うしくみを真似た4種類の模型を完成させたら、いよいよ外へ出て実験です。

タネの模型を台に乗せる矢野氏の写真
木々の間につるされたタネの模型
落ちてくる模型を見上げる人々

模型を並べたトレーを木の梢近くまで滑車で引き上げて落とします。種類ごとに落としてみると、くるくる回ったり、ひらひらと舞ったりと、落ち方は実にさまざま。

自分の手で模型をつくっているからこそ、「あ、こういう形だから、こんなふうに飛ぶんだ!」と納得感もひとしお。仕組みを知り、目の前で確かめることで、タネの工夫がぐっと身近に感じられ、体験学習の楽しさと価値を実感できる時間でした。このようなひとときも、訪問型授賞式の日本自然保護大賞ならでは。毎回、個性豊かな授賞式が開催されています。

矢野様、長年にわたるご活動、本当にお疲れ様でした!

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