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Report活動報告

2026.3.17

2025年授賞式

【日本自然保護大賞 2025】
大賞/保護実践部門「兵庫県三田市」の授賞セレモニーを開催しました。

集合写真

自然保護と生物多様性保全に日本で最も貢献した取り組みを表彰する「日本自然保護大賞2025」は、今回で11回目。前身の沼田眞賞から数えると24回目の開催となりました。全国から72件の応募をいただき、3つの部門の大賞と、特別賞として沼田眞賞、選考委員特別賞の授賞者が決まりました。受賞者への授賞セレモニーは、受賞団体の地域を訪問して開催しています。

2025年12月19日(金)、兵庫県三田市役所において、「日本自然保護大賞2025」保護実践部門の大賞を受賞した三田市の授賞セレモニーを開催しました。自治体が同賞を受賞するのは、日本自然保護大賞の創設以来、初の事例となります。

三田市は、元々は工業団地の開発予定地内にあった皿池湿原を、生物多様性維持のために重要な場所として保全を決定し、天然記念物に指定するなど、次世代に繋ぐ取組みを行ってきました。特に、同市の「里山保全課」が事務局としてリーダーシップを発揮しながら、地元の博物館などの専門機関、ボランティア組織、市民の皆様とともに、湿原特有の多様な生息環境を守り、そして活用してきた点が大きく評価されました。

授賞セレモニーでは、選考委員長である土屋俊幸(日本自然保護協会理事長)より、三田市長である田村克也氏、三田市里山保全課主任の山本祐子氏へと表彰状と記念の盾が贈呈されました。

賞状授与の様子
3人の写真
写真左から、土屋俊幸選考委員長、田村克也氏、山本祐子氏

皿池湿原の保全活動は多くの連携を展開することで進められてきましたが、その中でも特に大きな役割を果たした、公益財団法人ひょうご環境創造協会を代表し、理事長の菅範昭氏、また、ボランティア団体として2016年度より活動を展開されてきた皿池湿原の守り人(以下、「守り人」)の吉田滋弘氏にご挨拶をいただきました。

また、当日のご出席は叶いませんでしたが、兵庫県立人と自然の博物館の副館長である石田弘明氏より、温かなビデオメッセージを頂戴し、会場にて上映を致しました。

スピーチする菅氏
公益財団法人ひょうご環境創造協会 理事長菅範昭氏
スピーチする吉田氏
皿池湿原の守り人 吉田滋弘氏

その後、三田市の里山保全課の山本祐子氏に、活動内容についてご発表をいただきました。

発表する山本氏

これまでに皿池湿原で確認された動植物は、合計586種にのぼり、そのうち75種が希少種とされています。湿原特有の多様な生きものが生息するこの貴重な自然環境を守るため、どのような体制で保全活動が推進されているのかについて、詳細なご説明をいただきました。

ボランティア団体「守り人」の結成については、2016年に養成講座を実施し、2017年以降、継続的に保全活動を進めてこられたとのことです。現在では、個人ボランティア70名に加え、3社の企業が活動に参加しています。「守り人」の活動内容は、ため池における水生生物調査や開花調査といった調査活動にとどまらず、ササ類の刈り取りや伐採木のチップ化など、湿原および里山林の維持管理に関わる幅広い取り組みが行われています。

こうした継続的な湿原と里山林の管理の結果、2017年と比較して新たに41種の動植物が確認されるなど、生物多様性および景観の両面において、顕著な成果が現れています。

特筆すべき点は、保全にとどまらず、自然環境の積極的な活用にも取り組まれていることです。市民を対象とした自然観察会を年2回開催し、皿池湿原への理解と親しみを深める活動が行われています。これらの観察会は毎回、参加希望者の抽選が行われるほど好評で、これまでに累計700人以上が参加されています。さらに、高校生や大学生にとってのフィールドワークの場としても活用されており、近隣大学では卒業論文などの研究フィールドとして利用されている点についても紹介されました。

ご発表後の質疑応答では、コロナ禍での活動の様子など、時代の潮流に合わせた活動のあり方ついてご経験を共有いただく場面もありました。

質疑応答の様子
質疑応答の様子

今回授賞セレモニーに参加された「守り人」の皆様の中には、受賞の喜びに思わず涙される姿も見受けられました。市民の宝である皿池湿原を次世代へ継承するため、夏冬を問わず献身的に活動されてきた長年の努力が、今回大賞として全国的に評価されたことに、私たちも深い感動を覚えました。

授賞セレモニーの後には、実際に皿池湿原へ移動し、現地を視察させていただきました。現地では「守り人の館」を起点に、AからIまでの各湿原を順にご案内いただき、保全活動の現状について詳しくご説明いただきました。

現地視察の様子
現地を説明する担当者

ため池への外来生物の混入をはじめ、野生生物、特にイノシシの侵入による植生への影響など、現場が抱える具体的な課題について共有いただきました。また、撹乱に比較的強いサギソウのような種と、そうでない種が共生するサイトにおいては、どの種の生育を優先すべきかを専門家と議論しながら、方針を定めていくとのお話がありました。 景観が開けた湿地エリアは、子どもたちの自然観察に特に適しており、大人よりも低い目線を持つ子どもたちが、ヒメタイコウチなどの小さな生きものを見つけてくれることも多いそうです。

現地視察の様子
木道での視察の様子
手作りの看板の写真

道中には、「守り人」の皆様がそれぞれの特技を活かして制作された手作りの看板が随所に設置されており、皿池湿原が市民の手によって丁寧に守り育てられてきた様子が伝わってきました。

今回、湿地と里山の双方を継続的に管理することで生物多様性の保全に取り組まれてきた、特異なフィールドにお招きいただき、市民・専門家・市が一体となった、まさに理想的な協働の姿に触れる貴重な機会をいただきました。年々注目を集める皿池湿原が、今回の受賞を契機として、今後さらに活動を発展させていかれることを心より応援しております。三田市の皆様、このたびは誠にありがとうございました。

皿池湿原の看板
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